「“止まらない通信網”を活用した命をつなぐ減災推進事業実証実験」の実施

株式会社Skeed

宮島恒敏

取組み概要

美波町は、少子高齢化及び、過疎化といった課題を抱える地域ですが、同時に南海トラフ地震という災害に見舞われる可能性が示唆されている地域でもあります。
高齢化が進んだ地域における防災、減災への取組は重要視され、美波町では無視できない課題となっています。

美波町に進出し、自社の持つIoT技術を生かした“止まらない通信網”を活用した減災推進事業に取り組む、株式会社Skeedの宮島恒敏 氏に現在取り組み状況などを伺いました。

関係者インタビュー

御社の事業・活動について教えてください。

ファイル転送ソフト「Winny」を開発した金子勇氏が創業者の一人であり、P2P技術を継承し続けている企業です。P2P技術を応用した情報通信事業を展開しています。
・ファイル転送事業
 通常の回線より大容量かつ高速な通信が可能な、高速ファイル転送サービスを運用しています。通常回線より50〜70倍の速度で転送でき、メディア関連業務にて映像のファイル転送などに活用していただいています。
・IoT事業
 P2P技術を応用し、独自の通信網を構築し、認知症高齢者のトラッキングや災害時に活用できる独自エリア通信技術の開発を行なっています。

なぜ美波町で活動をしようと考えたのですか?経緯について教えてください。あわえ様との関わり方についても

17年ほど前に、株式会社あわえ様より、美波町の視察ツアーのお誘いを受けて、美波町を訪れたのが始まりでした。(画像右:株式会社あわえ 遊亀氏)
美波町の課題を伺い、高齢化に加え、南海トラフ地震へのリスクを抱えた地域であるということをそこで知り、弊社の持つ技術を活かせないかという検討がスタートしました。

当時、北九州でP2P技術を応用した認知症高齢者の見守りを手がけており、その技術を美波町でも応用できないか。こうした気づきから、今の「“止まらない通信網”を活用した命をつなぐ減災推進事業実証実験」が立ち上がってきました。
また、IoT技術の活用が世間的にも提唱され始めた時期でもあり、国からの支援と徳島大学の協力もあり、2017年の実証実験実施以降、検証を重ねてきております。

取組みの「今」について教えてください。また、課題などあればお聞かせください。

弊社は主に独自通信網を構成する中継器の設置開発を手掛けています。
中継器は920MHz帯を利用して通信を行い、互いに通信で繋がります。この中継器を一定のエリアにいくつも配置することで、相互通信可能な通信網を構築します。
通信網エリア内にBluetoothビーコンがあると、ビーコンと中継器が通信を行い、エリア内のビーコンが有する位置情報などを受け取ることができます。
つまり、ビーコンを持った人が通信網内に居れば、その人の位置を知ることができるという仕組みです。

中継器へアクセスすることで、災害時にはビーコンを持った人の避難状況を確認でき、一人暮らしの高齢者の状況確認などにも活用できると考えております。
実際に、2017年以降「避難訓練」ということで、参加者にビーコンを持っていただき、通信網からデータを収集するという実験を行なっております。

実験開始以降徐々にエリアの拡大を目指しておりますが、現状では日和佐地域の一部になっているのが現状です。
通信網の構築には原資が必要となりますので、事業を継続するためには、減災対策という切り口以外の活用方法も見出す必要があると考えております。
また、いつ発生するかわからない災害に対し、普段からビーコンを持ち歩いていただくという課題もあります。

今後の目標・ビジョンについて教えてください。

ビーコンをいかに普段から携帯してもらうか、という課題に着目し、「健康マイレージ」という取組みと併用し、カバーできるような取組みを考えています。
また、防災という観点だけではなく、通信網を用いた、地滑り検知や現場作業員の体調管理などへの活用も検討しています。
現在、コンソーシアム15社と自治体、大学とも協力しながら進めておりますが、引き続き弊社の通信網を活用した取組みを続けていきたいと思います。